2006年11月12日
染織家・佐藤常子さん
草花や自然の原料などから糸を丁寧に染め上げ時間をかけてゆっくりと織りあげていく。
「自然の命をいただいてるでしょう。本当にありがたいなぁと思うの」静かな優しい口調の常子さん。伝統工芸展の染織 部門でも常にその名を連ねる染織家の素顔は本当に穏やか。
自宅の2階に置かれてある機織り機。集中した「無」の時間に織り出される縞柄や無地や格子など、ここからたくさんの「宝物」が生み出されたことだろう。
「この赤い実ね、鳥たちが突付きにくるのよ。」
窓の外を見ながらそう話す。機を織る手を休め、鳥の鳴き声を聞いたり庭の木々と「会話」をするのは常子さんの手仕事に欠かすことができないもののようだ。
第53回日本伝統工芸展岡山展が11月16日(木)から12月3日(日)まで岡山県立美術館で開かれる。入賞作品の他、重要無形文化財保持者(人間国宝)、日本伝統工芸会会長賞を受賞した備前焼作家の宮尾昌宏さんら県内の入選作家32人の作品を含む計284点が展示される。出品作家による列品解説会などもある。伝統工芸の優れた技と美を身近に感じられる貴重な機会。「こんな作品もあるんだ」という感じで「気軽にお出かけ」をオススメしたい。
第53回日本伝統工芸展岡山展に出展されている染織家・佐藤常子さんの作品「春日」。ご本人に許可をいただいて図録の写真を撮らせていただいた。「桜の木を切ったからとたくさんいただいたの。丸太のような木を庭に置いてたらそこから小さな桜の花が咲いたの。切られた後なのにね・・・。木の力を感じたの。そこからイメージがわいて、少しずつ桜が咲き始めたイメージで創ってみたんです」と常子さん。是非、実物の作品を県立美術館で拝見したい!!
森田が7月に出版した『和みおかやま』(ソウルノート刊)の表紙は、佐藤常子さんの紬織り着物「月明かり」。自分へのご褒美?と励みにと5年前に購入。大事に大事に袖を通し、色々な場で活躍している着物だ。常子さんとの出会いは大学4年生の11月。民放局に就職がきまり、入社前にその局で一時期朝の番組のレポータをしていた頃、取材でご自宅にお邪魔したのが最初だった。公私共に温かくお付き合いを続けてくださる常子さん。ご一緒させていただいたその時間はまさに「和み」だった。